鶯谷所印

SPOT

旧陸奥宗光邸

キュウムツムネミツテイ

旧陸奥宗光邸
お話を聞いた人

西宮 竜也

Tatsuya Nishinomiya

長崎県出身。鉄道会社に勤務し、地方創生などのプロジェクトに携わる一級建築士。西宮家に婿入りし、「旧陸奥宗光邸」の二階部分に10年以上家族で居住。貴重な建物を未来へ残すため、リノベーションに取り組む。


このスポットについて教えてください!

ここは明治の頃に、迎賓館的な役割で使われていた建物でした。当時、外務大臣を担当していた陸奥宗光という方が、三井家から寄贈されて、家族で三年ほど住んでいたと言われています。実際には、本人は海外で暮されていたそうですが。10年前くらいからこの二階に住んでいるのですが、はじめは水回りもなかったですし、そもそも現在の建築基準法がない時代の建物ですので、防災面も含め修繕が必要でした。私は大学で明治の頃の建築の研究をしていたこともあり、こういう建築物が大好きだったので、自分でリノベーションをしながら、貴重なデザインモチーフを残しながら未来へ受け継いでいます。1階の天井が剥がれてきたり、窓が開かなかったり、色々と問題もありますが(笑)。実際に住んでいるので公に開放することはできないのですが、外観を眺めに来られる方は多いですよ。近くにある根岸小の子どもたちからは、“ホワイトハウス”という愛称で呼ばれています。

とくに注目してほしいポイントは?

明治の18年頃からこの建物で出版社をしていた時期があり、その頃の名残として今では希少な「ちりめん本」と呼ばれる本がたくさん眠っています。『桃太郎』や『猿蟹合戦』など日本の有名童話を木版で印刷しており、今見てもかなり味があります。当時来ていた外国人の力を借りて、8カ国後くらいに翻訳して土産物として海外へ輸出していたらしく、海外にはコレクターの方がいるようですね。

鶯谷という街の良さは?

混沌としているところかな。色々なカルチャーが混じっていますし、ホテル街があるというのも個性ですよね。古い家屋がだんだんなくなっている寂しさもありますが、まだまだ風情のある建物も多いですし、水路の跡がそのまま道になったような路地など、街全体から土地の文脈や歴史を感じることができます。

街へ訪れた人におすすめしたいスポットは?

以前であれば、創業320年の老舗豆腐屋「笹乃雪」をおすすめしていましたが、コロナ禍でなくなってしまって……。今ならどこだろう。うちかな?(笑) こういう建物が残っているところをぜひ一度見ていただきたいですね。個人的には、二階の欄間の部分がアーチ状になっているのが、デザインとして面白い点だと思っています。本当は中の雰囲気もお見せしたいところなのですが。

『鶯谷所印』を集める人へ、メッセージをお願いします!

「旧陸奥宗光邸」は、関東大震災や東京大空襲を経て運良く残ったものなので、130年の歴史を感じていただけると思います。この辺の一帯はほとんど焼けてしまって、この一角だけ残ったそうなんですよ。そういう意味ではこの地にはなにか特別な力があるのかもしれないですね。なぜだか電化製品がびっくりするくらいハイペースで壊れるんですよ(笑)。あと、草木がやけに良く育つ気がします。

スポットを担当したイラストレーター

くらちなつき

Natsuki Kurachi

イラストレーター/ファッションイラストレーター
1993年愛知県生まれ。2016年に武蔵野美術大学油絵学科を卒業後、活動開始。
東京都在住。
主なお仕事にGINZAのウェブ連載「22時の冷蔵庫」など。広告、雑誌、商品など様々な媒体にイラストを提供しています。

INFORMATION

旧陸奥宗光邸

キュウムツムネミツテイ

東京都台東区根岸3-7-16
※住居のため外観のみ観覧可能